神奈川県横須賀市。三浦半島に位置する人口42万人を数える都市です。一般にはペリー来航や軍港などのイメージがあるでしょうか。
スポーツに関してはどうでしょう。
ぼくは、湘南シーレックス(横浜ベースターズのファーム)、都市対抗の日産自動車といった野球のイメージはありましたが正直サッカーに関してはあまり強い印象はありませんでした。唯一、横浜Fマリノスユースが市内追浜にあることぐらいでしょうか。
そんな横須賀市で「横須賀にスタジアムを作る会」というサッカー専用スタジアムを作ろうという運動をしている団体があります。どんな活動をしているのか興味があったので取材してきました。
■横須賀市のサッカー
取材に応じていただ炊いたのは、同会の當間信彦さんと古敷谷敬二さんです。
當間さんは、伝説のサッカーファン団体・日本サッカー狂会会員でもいらっしゃいます。小敷谷さんは市内でフットサル場やゴルフ練習場を経営されており、今回もその事務所でお話を伺いました。
まず、この団体が出来た経緯からです。
団体メンバーの、早瀬翼さんという20歳の方です。この方は横浜フリューゲルスのサポーターでフリューゲルスがなくなった2000年、つまり中学生時(!)に自分の住む横須賀にもサッカー場がほしいと思い立ったのが始まりです。当時、横須賀市内には一般の人たちがプレーできるような芝のグラウンドはありませんでした。賛同する人が数人集まり、活動がスタートしたということです。
では、横須賀市内のサッカーに関する現状はどうでしょうか。
実は市サッカー協会に登録している人は4500人もいます。登録のない人はフットサルも含め活発に活動しています。もちろん観るのが好きな市民もたくさん存在しています。ですが、市内には満足にゲームのできるグラウンドがほとんどないのが現状です。他の市までゲームをしに行かねばならないという不自由な状況なのです。
三浦半島リーグという社会人のリーグがありますが、そのリーグでも会場の確保が大変です。横須賀市で一番上のカテゴリーのチームといえば、女子関東リーグに所属する「横須賀シーガルス」があります。ですが、このチームが公式戦をするもの学校のグラウンドを借りたり隣の三浦市のグラウンドを使わざるを得ないのです。
ここでひとつ疑問が浮かびました。
ある程度の市町村ならば陸上競技場ぐらいはあるはず。サッカー専用とはいきませんがそこを使うわけにはいかないのでしょうか。
「確かに規格フィールドの取れない不入斗総合グランドやはまゆう公園運動場などはありますがフィールドの質がまったくよくないのです。大きさも基準を満たしていないためサッカーでは使えません。照明もありません」
ということでした。
■活動
では「横須賀にスタジアムを作る会」は具体的にどのような活動をしているのでしょうか。
主な活動は、署名を集めることです。実績としては、2003年と2005年に市に8000人超の署名を提出しています。
この作る会は、今まで独自で署名活動をしてきましたがもっとその活動の力を強めるため市議に顧問についてもらったり、今年から市サッカー協会と共同で署名活動をするなど力を強めようと努めています。
逆に言えば、市サッカー協会とそれまでは方向性などで必ずしもしっくりいっていなかった面はあるようですが作る会のスタッフの方々の努力により、それも解消し今年いっぱい共同で更に署名活動をしていくということです。
署名活動の場所は、市内で行われる様々なカテゴリーのサッカー試合会場や駅前、賛同してくれるショップ、そしてネットです。
作る会は、市民に理解してもらえるよう署名以外でも、活動しています。
9月24日にもNPO法人横須賀国際交流協会主催の「国際スポーツ交流 イン よこすか」というイベントでスタッフとして手伝ったり他の音楽系の団体と交流を持ったりしています。
■市の反応
このように努力を続ける作る会と市サッカー協会の働きかけに対して、要望を受け付ける立場の横須賀市はどのような反応ですが・・・
端的に言ってあまり反応はよくありません。
理由としてはいくつかあります。
日産自動車の工場をはじめ市内の大手企業が撤退する状況が続いており、税収が非常に厳しくなっています。また市は、美術館を建設し来年オープンさせるといった事情もあり大規模な支出はしにくいという事情があります(横須賀市は晩年にアトリエを構えていたということで谷内六郎の作品を多く所蔵しています)。
作る会では、日本サッカー協会にもアドバイスを求めたことがあります。
日本協会は「マリノスとい交渉した方が早いのでは」との回答でした。確かに横須賀市はマリノスの準ホームタウンとなっていますが、マリノス側で市にスタジアムを作るという気はないようです。
そうなると、やはり市に作ってもらうのが一番ということになります。
■スタジアム施設の提案
では作る会の欲しているスタジアムとはどんなものでしょうか。もちろん日産スタジアムや埼玉スタジアムのようなものを求めているわけではありません。収容人数1500人規模で照明を備えた天然芝のスタジアムです。スタンドはメインのみでいいということです。大阪・鶴見緑地(3700人収容)の半分の規模でいいわけです。
<http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E9%98%AA%E5%B8%82%E9%B6%B4%E8%A6%8B%E7%B7%91%E5%9C%B0%E7%90%83%E6%8A%80%E5%A0%B4>
市民が気軽に使えるサッカー場。これが目的なのです。
場所についても具体的に提案しています。
市内・佐原というところに日産の工場跡地があります(現在は市有地)。横浜横須賀道路の佐原インターからほど近く、京浜急行北久里浜駅からも徒歩圏内の場所にあります。
その「候補地」を実際に見てみました。
■十分な広さの「候補地」
當間さんと小敷谷さんの案内で、作る会が推奨する「候補地」に行ってみました。
現在はその土地の一部には湘南学院高校のグラウンドにもなっています。また小学校も作るような予定もあるそうなのですが、それを作ったとしてもまだ十分な広さがあります。
副市長は私見とした上で「多目的広場なら」という話をしてくれたこともあり、まったく可能性がないわけではないようです。
この場所に、スタジアムとクラブハウスがあり平日夜や週末には様々な市民が集うような場所になれば・・・。
お二人はいろいろな夢を語ってくださいました。
■活動の今後
「横須賀にスタジアムを作る会」の活動は、今年いっぱいの署名活動をまとめ市に提出することで一区切りをとりあえずつけます。最大の目的は、市に「スタジアムを作る」と言わせること。これができれば役目は終わるということです。
もちろんスタジアム完成時には、スタジアム管理や試合運営のボランティア等新たな活動へ進化させていく希望は持っています。
前述した横須賀シーガルスという子供から女子・シニアまで所属するクラブがあります。
そのチームがホームとするスタジアムになるのかもしれません。ですが、具体的にJリーグを目指すといったチームがない横須賀市で「スタジアムを作ろう」という活動をしているのはユニークです。
「まずチーム」というより「まずスタジアム」を作りそこへ集う市民が楽しめる場を作っていく。それがひいては、強いチームを生んでいくという流れができるかもしれません。
状況は厳しいものがありますが、実際横須賀市からは、石川直宏(FC東京)やアトランタ五輪女子代表だった矢野嬌子・山本絵美といった選手が出ています。
そういう点も踏まえ、そしてこの横須賀が成功例として、全国に広まっていけばと思います。巨大なスタジアムである必要はまったくありません。
学校の芝生化とともに、日本サッカー協会も協力できないでしょうか。
これは、本当の意味でのスポーツ文化のインフラであるはずです。
全国至る所に、作る会が求めている規模の施設ができてサッカーをやる人が集う。そこからチームができ、やがてJリーグを目指すチームが誕生していく・・・
スポーツ施設を実際に経営されている古敷谷さん・相当なマニアである當間さんの熱意あるお話をうかがって、ぼくもそんな夢を語っていました。
「横須賀にスタジアムを作る会」では、趣旨に賛同してくれる方の署名を募集しています。
市民でなくても可能です。
<http://members.jcom.home.ne.jp/3381853501/index.html>
(佐藤冬見)