| 「やりきった感」のあるガイドブック 2010.3.31 Tuesday |
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あらかじめお断りしておく。以下は完全なる宣伝である。年明けからかかりっきりになっていた仕事がようやく完成した。「2010南アフリカワールドカップ体感マガジン」(日本経済新聞出版社)である。今回は安藤正純さん、西部謙司さんと並んで「責任監修」という形で参加させていただいた。 もちろん監修だからすべてのページに目を通したし、後藤健生さん、西部さんとの大会展望座談会にも顔を出している。だが、最も注力したのが、開催地南アの現状を旅情たっぷりにレポートした「徹壱が行く、南アフリカを。」のコーナーである。今年1月に敢行した現地取材(10日間で6都市を踏破)を32ページ(プラスその他の開催地で3ページ)で再現するという、実に太っ腹な企画。出版不況があちこちで語られる昨今、これほど贅沢な作りのワールドカップ・ガイドブックは他に例はないだろうし、4年後もこうした企画が実現するかどうかもいささか疑わしい。それだけに、限られた時間のなかで精いっぱい書かせていただいた。 本書は、いわゆるガイドブックとは一線を画する作りになっている。まず目を引くのが、カバーデザイン。列強のスター選手を前面に押し出すのではなく、むしろ開催地南アのイメージ(マンデラや現地の動物、子供たちなど)をしっかりと見せている。今回の南ア大会は「TV観戦のためのワールドカップ」と言われているが、本書はあくまで「現場主義」。それは中身にもしっかり反映されていて、私のパートの他にも、現地観戦に必要な情報がひととおり網羅されている。執筆者は一緒に現地を旅した秋元大輔さんで、彼は本書のエディターとしてもいかんなく能力を発揮している。194ページのガイドをまとめ上げるのは相当な苦労があったはずだ。まずは「お疲れ様でした」と申し上げたい。 もうひとり「お疲れ様でした」と申し上げたいのは、現地取材でのコーディネーターとしてお世話になった山脇愛理さん。南部アフリカのエキスパートである彼女は、取材先へのアテンドのみならず、車での移動や通訳でも大変お世話になった。生まれは日本だが、お父さんの仕事の都合で小学校に上がる直前(アパルトヘイト撤廃前の時代)に南アに引越したという山脇さん。その後も、日本や英国で学んだ一時期を除いて、青春時代のほとんどをかの地で過ごし、今はコーディネーターという仕事を通して、南アが持つ底知れぬ魅力を伝える仕事を続けている。彼女との語らいから、私自身、さまざまな場面でかの国のポテンシャルを感じとることができた。この南アの素晴らしい語り部に、あらためて感謝の気持ちを伝えたい。 さて本書は、この他にもオシム、ジーコ、トルシエの歴代日本代表監督インタビュー(ご協力いただいた皆さん、ありがとうございました)、そして安藤さんの翻訳による各国代表監督や選手への独占インタビュー、西部さんによる出場32チームの分析など、各監修者の持ち味が存分に生かされた構成になっている。これだけのボリュームと内容で定価790円というのは、かなりのお買い得と言えるだろう。いささか手前みそになるが、これほど「やりきった感」のあるガイドブックも、なかなかお目にかかれない。どうか書店で見かけたら、お手にとっていただければ幸いである。 |
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| ミズノスポーツライター賞受賞について 2010.3.7 Saturday |
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すでにツイッターでつぶやいているので、ご存じの方も少なくないと思うが、あらためてご報告させていただく。昨年11月に上梓した「フットボールの犬 欧羅巴1999-2009」(東邦出版)が、第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞することとなった。本書の発表にあたって尽力してくださったスタッフの皆さん、そしていつも叱咤激励してくださるファンの皆さんと家族に、あらためて御礼申し上げる次第である。本当に、皆さんあっての私です。有難うございました。さて、吉報が舞い込んだのは今月5日。取材を終えて、自宅に戻る電車の中で束の間の仮眠をとっていたときのことだ。携帯電話に見知らぬ番号が表示されていたので、車中にもかかわらず慌てて着信ボタンを押して左耳に当てると「このたび最優秀賞受賞うんぬん」の言葉。いちおう2月の時点で「候補の4作品に入ったらしい」とは聞いていたので「ふふふ、岡ちゃんより先にベスト4だぜ」とひとり悦に浸っていたのだが、まさか最優秀賞をいただけるとは思っていなかった。これまで個人タイトルとはまったく無縁の人生を送ってきただけに、まさに晴天の霹靂である。 このミズノスポーツライター賞は「スポーツライターの業績を顕彰するわが国唯一の賞」(HPより)である。世の中にスポーツライターは何人いるかは知らないが、サッカーの現場だけでもかなりいるのだから、野球や格闘技やアマチュアスポーツといった他ジャンルも含めたら膨大な数になるだろう。実際、サッカーをテーマとした作品の最優秀賞は、第16回受賞の木村元彦さんの「オシムの言葉」(集英社インターナショナル)以来だから、実に4年ぶりのことである。サッカーという、日本のスポーツ界ではまだまだマイナーに甘んじているジャンルで、しかも本書のようにアイルランドとかフェロー諸島とかマルタといった、さらにマイナーなジャンルにスポットを当てたテーマに対して、このような過分な評価をいただいたことについては、まさに汗顔の極みとしか言いようがない。 賞のお知らせ電話を聞いた印象では「フットボールの犬」そのものよりも、これまでの仕事の積み重ねが評価されたようである。個人的には前作「股旅フットボール」(東邦出版)のほうに手ごたえを感じていたのだが、結果的には2年続けて作品を世に送り出したことも、今回の評価につながったように思う。また「フットボールの犬」自体、過去10年間のヨーロッパ取材の集大成であり、時間もさることながら、トータルの労力と取材費も膨大なものであった。これだけの作品を発表するには、これから最低でも10年の歳月が必要となるわけで、果たしてそのころまで今のような活動を続けていられるかどうか、いささかの不安も拭えない。そうして考えると、今回の受賞のタイミングは、まさに自分にとってのラストチャンスであったと言えよう。 いずれにせよ、これまでの自分の仕事が評価されたことは純粋に嬉しい。だが、実はそれ以上に「これでネットライターという存在が、ある程度は認められたのではないか」という思いを密やかに抱いている。私自身、常にブックライターでありたいとは思っているが、ライターとしての主戦場は基本的にインターネットである。逆にネットという発表の場がなかったら、とっくの昔に業界から足を洗っていただろう。たまさか時代の巡り合わせもあったと思うが、私はネットに救われ、ネットに生かされてきたことは、紛れもない事実である。であるがゆえに、私はネットライターとしての出自には誇りを持っているし、私の後ろにネットライターからブックライターになろうとしている後輩たちが控えていることも、それなりに自覚している。 今回の最優秀賞が意外に思われた理由は、まさにそこにあった。というのも、作品の対象領域に関するいくつかの条件の中に「インターネット上のウエブサイトなどで発表されたもの」は除くとHPに明記されていたからだ。本書には、初出がウエブサイトだったものが数本含まれており、しかも私の出自を考慮するならば、コンペティションの主旨から逸脱するのではないか、というもの言いがついても不思議ではないと考えていた。それだけに今回の受賞は望外であり、同時に、ネットライターの社会的地位の向上を予感させるものとして、大いに期待感を抱く次第である。 ともあれ、受賞はあくまでも通過点。急に原稿料が上がるわけでも、仕事がどかどか舞い込むわけでもないだろう。文豪気取りで銀座で豪遊しようとか、芸能人気取りで外車を乗り回そうなどとはつゆほども考えてはいない。まずは、目前の締め切りにひとつひとつ対峙しながら、時間があるときには授賞式に何を着るか、頭を悩ませる日々である。そうだ、ウケ狙いで犬の着ぐるみで登場してみようか――もちろん、冗談です(笑)。 |
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